オタク腐女子のグダグダ日記
Posted by ハシバ - 2008.07.22,Tue
連休中に自分の書いたテキスト(小説)を読み返していたんだけど、書きかけのものがたっっっくさんあって。
書きかけでも結構楽しかったので、いくつかチョイスして載せてもいいかなーと思いました。まぁ、楽しいのは私だけなんですが……
以下はハガレンの小説。これはちゃんと完結してます。
ハガレンはデビルズネストあたりまでしかちゃんと読んでないので、設定等に齟齬があるかもしれません。まぁ、パロディなので大きな心で読んでください。
生身を取り戻して、国家錬金術師になったアルフォンスの話です。
書きかけでも結構楽しかったので、いくつかチョイスして載せてもいいかなーと思いました。まぁ、楽しいのは私だけなんですが……
以下はハガレンの小説。これはちゃんと完結してます。
ハガレンはデビルズネストあたりまでしかちゃんと読んでないので、設定等に齟齬があるかもしれません。まぁ、パロディなので大きな心で読んでください。
生身を取り戻して、国家錬金術師になったアルフォンスの話です。
国のほぼ中央に位置するセントラルシティ。それの中心にある中央司令部は、正にこの国の臍(へそ)だ。
玄関を入ってすぐのホールは民間人も立ち入る事を考慮してか、軍本部とは思えない温和な空気を醸し出している。円形に並んだ柱に、球状のドーム。卵の殻を思わせる柔らかい曲線は、同時に“臍の内側”を連想させた。しかし、それはあまり気持ちの良い想像ではなかった。
軽やかな足音が背後から近付く。振り返ると、軍服に身を包んだ青年が、まるで振り向くタイミングを知っていたかのように自然な動作で踵を合わせた。
柔和な榛(はしばみ)色の瞳が真っ直ぐ私を見つめていた。
敵意も好意もない中庸の視線に、私は一瞬警戒を忘れて見入った。とても綺麗な瞳だった。
彼はささやかな微笑みを浮かべると、私に向かって敬礼をした。無駄のない、あまりに模範的な腕の角度に私は内心舌を巻いた。“セントラル”とは、こういう所なのか。
「はじめまして。アルフォンス・エルリックです」
微笑みと共に差し出された手を握り返しながら、私は目の前の青年に驚きを隠すことが出来なかった。
アルフォンス・エルリック少佐。28歳。3年前に国家資格を獲得した錬金術師。二つ名は『鉄(くろがね)』。
卓越した体術と高度な練成技術、明晰な頭脳を併せ持った有能な軍人であるとの噂は聞き及んでいた。
しかし。
私は二度、三度と瞬きをした。
目の前の青年は、どう見ても20歳くらいにしか見えない。いや、多く見積もって20歳、ぱっと見は17・18歳ほどだ。
仕官学校の生徒のような少年に目を疑うものの、肩の記章は間違いなく少佐の地位を示している。
はて、事前に手にした資料の、年齢の記載に誤りがあったのかと思っていると、まるで私の心中を察したかのように少年がクスクスと笑い出した。その声に、何故か私は小鳥が囀る様を連想した。
「僕があまりに若いので驚かれていますね。でも間違いはありません。2002年産まれ、28になりました」
「すみません、そんなつもりでは」
「お気になさらず。はじめてお会いする方は、皆そうなんです」
彼は柔和な笑みを浮かべ、「少し歩きましょうか」と私を促した。
ホールを横切り、日差しの差し込む渡り廊下を行く。陽光が暖かい。こちらはもう春なのだな、と思う。
「中央(セントラル)は温かいでしょう?」
青年が話し掛ける。彼のアッシュブロンドが光を返してきらきらと輝いているのを見ながら、あぁ春だと思う。
「ええ。北部(ノース)はまだ冬です。ノースシティは山脈の麓にありますからね、信じられないほど雪が降るんです。6月まで雪は消えません」
この話をすると、大抵の人間は目を丸くする。そして、ひとしきり北部の話題になり、相手の故郷の話にもなる。間を持たせるにはちょうどいい話題なのだ。
しかし青年は軽く、そうですね、と相槌を打つだけだった。
「僕も何度か北部には伺ったんですよ。一度、2月にブルッグズを登るはめになって」
それを聞いて私はギョッとした。ブルッグズ山は夏でさえ登攀の難しい天険の地だ。そんな場所に、真冬に踏み込むなんて!
「あぁ、頂上までではなくて、途中の山小屋までだったんですけど。でも無理でした。雪に体が沈んで、動けなくなっちゃったんですよ。“隙間”からどんどん雪が入ってくるから、もがくほど関節も動かなくなって……。あの時は本気で『あぁ、春までこのままかなぁ』って思いましたね」
「よく…… 助かりました、ね」
「丈夫でしたからね」
彼はニッコリと笑ってそう答えた。
丈夫? そんな一言で済むレベルだろうか。
「それは、任務で?」
「いえ、私用です。国家錬金術師になる前の話ですから」
物好きでしょう、と彼は微笑んだ。思わず頷きそうになって、慌てて顎を引いた。そんな私の反応が面白かったのか、彼はずっとクスクスと笑っていた。
切れ者だと聞いていた『鉄の錬金術師』。硬く冷たい、鉄のように頑健な男を想像していた私に、目の前の青年はあまりに温和すぎた。彼はまるで、春そのものだった。明るい日差し、若葉の芽生え、鳥の囀り、そういった生命の喜びが彼からは溢れていた。
「国家錬金術師の二つ名は、どういう基準で定められるのですか?」
不意に尋ねると、彼は私の瞳をじっと覗きこんできた。幼子のような無垢な眼差しに、私はひそかにたじろいだ。
「僕が『鉄』の錬金術師と呼ばれているのが、そんなに不思議ですか?」
彼は、真面目な顔でそう呟いた。どう答えていいのが分からず、私はただ彼のヘイゼルの瞳を見つめ返すだけだった。
「……まだ、約束の時間には余裕がありますね」
彼は唐突にそう言い、懐中時計(それはいわゆる“銀時計”ではなく、趣味のよい小振りの時計だった)で時間を確認ながら何度か頷いた。
「中庭に出てお話しましょう。ちょっとしたベンチもあるんですよ。是非」
彼はそう言い、日差しの方向に私を促した。こっそりと人差し指の背を自身の唇に当て、彼は悪戯っぽく微笑んだ。
「これからする話は、内緒の話なんです。内緒の、内緒です」
その顔はまるで、これから『秘密の基地』に案内する子供のようだった。
私は彼の笑顔を目の当たりにしながら、ここが軍の司令部であること、彼は軍人であること、そして、彼が国家資格を取得するほど優秀な錬金術師であることを、何度も自分に言い聞かせなければならなかった。
それだけ、彼は魅力的だった。
清流に輝く小魚の背びれ、陽だまりに咲いた白い花、春霞の淡い青。若草を裸足で踏みしめた時の、あのしんなりとした冷たさと芳しい香り。
脳裏にいくつもの思い出が過ぎる。
春。
春は、私が一番好きな季節だった。
彼はこじんまりとした中庭に私を案内した。
正確にはそこは中庭ではなかった。地面が建物の三階ほどに相当する高さにある。空中庭園と中庭のあいのこのような感じだった。四方を壁に囲まれてはいるが、庭自体が高い位置にあるせいか日差しが陰ることもなく、全体的に明るい印象だった。
彼は庭の中央に敷かれた石畳を、まるでそれが赤絨毯であるかのような優雅さで歩いた。彼が日差しの中に入ると、待ち構えたように鳩が何羽も降りてきた。彼はそれを厭う様子もなく、ポケットから厚みのない薄い袋を取り出し、中身(それが何であるかは私からは見えなかった)を手で細かく砕きながら石畳に撒いた。鳩たちはそれを待ちわびていたらしく、我先にとそれを啄ばんだ。
彼は鳩たちを置き去りにすると、今度は私を石造りのベンチへと誘った。簡素な形のベンチは、日差しでほんのりと暖かかった。
「僕が『鉄(くろがね)』の二つ名を戴いたのは、」
彼は、餌を啄ばむ鳩に視線を置いたままで言った。
「僕がかつて、『鉄(てつ)』の体をしていたからです」
「それは比喩としてですか?」
尋ねた私に、彼は初めて私の存在に気付いたような顔をして振り返った。そして小さく微笑みながら、「いえ、」と首を横に振った。
「本当の話です、ほんとうの。僕は、冷たい鉄の棺(ひつぎ)だったんです」
私は、彼が何の話をしようとしているのか、全く分からなかった。しかし逆に、彼は私に分かるような話をする気がないのだ、ということはよく分かった。
子供が夜に見た夢の話をするような、将来の夢を語るような、そんなとりとめのない話なのだろう。
だから私は微笑むことが出来たし、彼はそれを見て続きを話すことも出来たのだ。
「僕は冷たい鉄の棺で、中身はがらんどうでした。僕はそこに、一人の人を閉じ込めていたんです」
彼は柔らかな笑みを浮かべ、再び鳩に目を遣った。私もその視線を追って、忙しなく首を動かす鳩たちを眺めた。彼らは白い体躯をして、羽毛の先端近くに灰色の斑点を持っていた。
「その人は僕の中で苦しんで、ずっと苦しんで、10年間ずっと苦しみ抜いて死にました。その10年の苦痛と、苦痛に染め抜かれた魂とを引き換えにして、僕は人間になったんです」
それは決して穏やかな話ではなかった。
彼の話の比喩するもの、話から想像できるものは、どれも穏やかではなかった。
しかし彼の口調は全く平穏そのもので、まるで私は彼の作った御伽噺を聞いているような気にさえなっていた。
何とはなしに彼に視線を戻すと、彼は私の顔を見つめていた。正確には、私の目を。
私は突然、自分がとても無防備であることに気付いた。しかしもう遅かった。
「“貴女(あなた)”の瞳は、とても綺麗な色をしていますね」
彼はとても優美に微笑んで、私にそう言った。しかし、その目は少しも笑っていなかった。
「とても綺麗なきんいろだ。おひさまのいろ、蜂蜜のようだ」
そして手を伸ばし、私の髪に触れた。彼の指の背が不意に私の頬を掠め、その残酷な冷たさに私は身を強張らせた。
「髪も同じ色に染めればいい。きっととてもよく似合う。きんいろの目に、きんいろの髪」
「それはどういう意味ですか」
私はそれだけを必死の思いで言った。緊張で咽喉が掠れた。
彼は私の声に、言葉の意味が分からないような、まるで言葉が通じなかったようなきょとんとした顔をして、私の髪からぱっと手を離した。
「好みの問題です」
彼はそう言い、にっこりと微笑んだ。それは無邪気そのもので、鉄の匂いも冷たさも、もう感じられなかった。
彼は機敏に立ち上がり、懐中時計を確認すると「時間です」と私に言った。
「ご案内します。どうぞ」
私は腰が抜けたような気分で、彼の差し出す手を取った。彼の手のひらは、春の日差しのように暖かかった。
一瞬通りすぎた闇に、どこか夢見心地になっている私を見ると、彼は朗らかに言った。
「でも、髪は染めない方がいいですよ」
何を言うのだろう、訝しむとその表情を見て彼は笑った。
「また殺してしまうかも知れませんから」
あははは、と子供の笑い声を上げて、彼は石畳の上で軽く跳ねた。声に驚いて、足元の鳩がばたばたと飛び立った。彼は全くそれを気に留める様子もなかった。
呆気にとられる私の前、穏やかな笑みを浮かべながら彼は慇懃な礼をしてみせた。
「どうぞこちらへ」
28歳、歳相応の錬金術師がそこにはいた。
[2004/3/18]
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Comments
あっははは!
アル、雪に埋もれましたか! なんたる予知能力(笑) いやでも、普通に考えて埋もれますわな。重たそうですもんね~
小説はもう媚もサービスもなく、自分が楽しむためだけに書いてるものなので、果たして人様が読んで面白いものかなーと首を傾げるところも多いのですが、楽しんでいただけたようで幸いです。
これからちょくちょく、自分チョイスでブログにUPしていこうと思いますー
小説はもう媚もサービスもなく、自分が楽しむためだけに書いてるものなので、果たして人様が読んで面白いものかなーと首を傾げるところも多いのですが、楽しんでいただけたようで幸いです。
これからちょくちょく、自分チョイスでブログにUPしていこうと思いますー
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